ドラッグデリバリーシステム(DDS)とは、薬剤を「目的とする病変部に」「適切な量を」「必要な時間作用する」よう送り届ける治療法のことである。薬剤の効果を最大限に引き出し、副作用を低減させる上で欠かせない技術、ナノテクノロジーを活用したDDS技術は今後ますます発展を遂げると思われる。

この分野では、アステラス製薬が遺伝子治療薬を手掛ける米オーデンテス・セラピューティクスを買収し、スイス・ノバルティスもsiRNAを開発する米メディシンズ・カンパニーを買収している。例えば、抗癌剤自体は癌抑制作用を有するが、投与量の多くは病変部である癌組織へ届く前に正常組織内に流出し、副作用を発生させる。流出しなかった量だけが病変部に到達しその結果本来持つ効果が発揮できない。できるだけ多くの抗癌剤を病変部に集中的に送り届けることができれば、副作用も少なく著名な効果が発揮できる。DDSのためのナノテクノロジーとして必要なことは薬剤運搬を担うキャリアがナノサイズであるということである。

癌治療においては、核酸などの癌治療薬をナノサイズのキャリアに運搬させ、DDSそしてEPR効果(癌組織内に浸透蓄積させる効果)により癌治療を行うことが可能である。