DDS(ドラッグデリバリーシステム)とは、適切な薬剤量を副作用を発生させずに病変部へ集中的に送り届ける治療法のことである。その三大テクノロジーとして、現在次の3つの基幹技術がある。

1)標的指向型DDS

病変部位へ集中的に薬物を到達させる技術であり、以下の2つに分類される。

①受動的ターゲティング:薬剤運搬体の粒子径などの物理化学的性質を利用して薬物の体内動態を制御する方法。

②能動的ターゲティング:抗体や糖鎖などにより病変部への親和性を高める方法。

2)放出制御型DDS

薬剤が病変部位に到達した時点で、薬効が現れる濃度以上、毒性(副作用)が現れる濃度以下の必要十分量の効果を高める上で重要な技術であり、以下の2つに分類される。

①リザーバー(拡散制御膜)型:薬剤を包む高分子膜の薬物透過性により薬物透過量を制御する方法。

②モノリシック型:薬剤を高分子あるいは無機物マトリックス中に分散させることにより薬剤の放出を制御する方法。

3)吸収制御型DDS

皮膚・粘膜などからの薬剤の吸収改善や血液脳関門通過の技術。

上述した3つのDDS技術を単独あるいはいくつか組み合わせることにより、さまざまな革新的製剤の開発が可能になる。その結果、新しいDDS創薬は、癌をはじめとして難治性疾患に対する治療の可能性を切り拓くと共に、薬剤本来の有効性の増強と副作用の軽減を実現し、また治療の利便性や患者QOLの向上に大きく寄与することが可能となる。