現在、さまざまな分野でDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)による治療が行われている。例えば、核酸は直接血管内に投与するとすぐに破壊され、また抗癌剤はほとんどが正常血管壁から漏れ出すため副作用が起きる。これらを防ぐため、治療薬剤を粒子内に封入して投与することが必要となってくる。

また、癌組織血管内皮細胞は正常血管内皮細胞とは異なり、200nm程度の広い隙間が開口しているため、治療薬剤封入粒子が100nm前後であれば、癌組織内に浸透し薬剤濃度が上昇する(Enhanced Permeation)。さらに、癌組織はリンパ管が未発達で薬剤の回収機構が不完全なため、結果的に癌組織内に長時間滞留・残存することになる(Enhanced Retention)。

この2つの効果、すなわちEPR効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)を利用した癌治療を行うため、ナノテクノロジーによるナノ粒子内封入治療薬剤であるDDS製剤の実用化が始まっている。