近年、中咽頭癌、特にヒト乳頭腫ウイルス関連中咽頭癌は増加の一途をたどり、特に、米国では、HPV 感染の増加により中咽頭癌が急増しているが、HPV 関連中咽頭癌は HPV 非関連中咽頭癌と比べ放射線治療効果が高く予後が良好である。

しかし、HPV 関連中咽頭癌患者の中にも、喫煙歴の有無だけでは明らかにならない予後不良群が 10-15%存在し、その解明が急務であった。

今回、Gタンパク質共役受容体に着目し、頭頸部癌におけるメチル化解析を継続的に行ない、HPV 関連中咽頭癌患者の遺伝的特性に基づいた治療方針の決定、つまり個別化を可能とする遺伝子の探索が行われた。

まず、頭頸部癌のDNA サンプルを用いて、Gタンパク質共役受容体遺伝子である NTSR1、NTSR2、GHSR、MLNR、NMUR1 遺伝子の遺伝子修飾(メチル化)解析を頭頸部癌の各部位(中咽頭、下咽頭、喉頭、口腔)で行い、次に、多変量解析にて無病生存率解析を行った。

その結果、頭頸部癌全体では GHSR、NMUR1 遺伝子の 2 つの遺伝子のメチル化が予後と関連し、さらに、頭頸部癌の各部位で解析すると GHSR、NMUR1 遺伝子ともに、中咽頭癌において予後と関連することが明らかになった。

この結果から、さらに中咽頭癌症例を個別化するために詳しく解析すると、従来の 2グループ(HPV 陽性グループ、HPV 陰性グループ)に加え、新たな HPV ステータスに関係がなく、GHSR、NMUR1 遺伝子ともにメチル化を認める高度メチル化グループが存在することがわかり、このグループはもっとも予後不良なグループであることが確認された。

今回の研究成果はリアルタイムなモニタリング法であるリキッドバイオプシーを使ったメチル化解析に応用され、Gタンパク質共役受容体である GHSR、NMUR1 遺伝子を標的とした新規薬剤開発につながることが期待される。

本研究成果は、国際学術誌『Scientific Reports』に公表された。