大腸癌は、主に大腸粘膜が腫瘍化したポリープから発生し、次第に粘膜下層や壁内部のリンパ管や血管内部に侵入しリンパ節や肝臓、肺など別の臓器に転移し、また大腸壁外まで広がり腹腔内に播種を起こす。
年間発生数は約158,000人で、やや男性に多い傾向にあり、50歳から60歳に多く30代前半から増加して、男性では3番目、女性では2番目に多い癌である。
治療は標準的手術が基本となり、癌が存在する腸管により術式が変わるが、原則、癌を含め約30から40cmの腸管を切除し、断端腸管同士を吻合する。
ただ、大腸癌手術において吻合時の縫合不全という合併症があり、直腸癌に対する縫合不全率は約13%と高率である。
縫合不全が発症すると便汁が腹腔内に漏れ重症腹膜炎を発症する場合があり、また、縫合不全がない場合は退院まで10日前後であるが、縫合不全がある場合は1カ月以上かかることが多い。
今回、この縫合不全発生の危険性を事前に察知する方法が報告された。
ICGとは肝機能検査(血漿消失率、血中停滞率及び肝血流量測定)にて用いられる薬剤で、近赤外線光に反応し蛍光発光する性質を利用し、血管及び組織の血流評価にも用いられている。
このICGを、直腸癌等の手術に対して、吻合部の腸管血流評価の有効性において、ICG不使用の方法とICG法との縫合不全発生率の比較試験が報告された。
今後、ICGを用いた腸管血流評価により縫合不全の予防ができ、便汁漏出による重症感染症を防ぐことが期待できる。
また、腹腔鏡下直腸癌手術後の縫合不全予防に対するICGを用いた腸管血流評価が標準治療となることが期待される。