乳癌悪性度にとって最も重要な指標は、エストロゲン(女性ホルモン)受容体(ERα)、プロゲステロン(黄体ホルモン)受容体(PR)、そして受容体型チロシンキナーゼHER2の3種類の分子の発現である。

例えば最も予後の良い乳癌はERα陽性PR陽性HER2陰性のタイプである。

この3種類の分子のうち、ERαとHER2は正常の乳腺にとって必須の増殖シグナルであるため、乳癌細胞内でも機能しているということは、正常乳腺と同じ増殖因子を必要としていることを意味する。

しかし、乳癌の発癌メカニズムには不明な点が多く存在する。

特に、これまでにさまざまな発癌因子が報告されているが、それらの関係を体系的に明らかにされていない。

今回、マウスの正常乳腺組織に初期の乳癌を誘導する方法を構築し、DNA 修復能が低下したときに、エストロゲン(女性ホルモン)に誘導されるMyc 遺伝子の発現が高まり、乳腺上皮細胞が増殖し、ヒト乳癌の初期で見られる様な異形成が起こることが明らかにされ、浸潤性の乳腺上皮細胞においても観察された。

さらに、別の女性ホルモンのプロゲステロンで異形成が抑えられることが確認され、乳癌の発癌メカニズムや予防の研究が進むと期待されます。

本研究成果は、国際学術誌「iScience」にオンライン掲載された。