肺癌は、日本を含めた全世界において癌による死亡原因の第 1 位であり、早期癌すなわち I 期における5年生存率は81.6%であるが、転移を含むⅣ期では 5.2%まで低下する。

そのため、早期の段階で肺癌を発見するために、検診において胸部 CT 検査が導入され、肺癌死亡率の低下が報告されている。

しかし、CT 検診には高い偽陽性率とそれによる不必要な精密検査の増加という問題があり、より高精度で簡便な診断方法の開発が求められている。

microRNAは20前後の塩基からなる一本鎖 RNA であり、標的 mRNA の 3′側非翻訳領域に結合し蛋白への翻訳を抑制している。蛋白発現量を制御することにより、細胞の分裂、増殖に関わっている。そのため、microRNA の発現異常が起こると癌の発生や進展に関与していることが明らかになってきている。

また、このmicroRNAは、体液中で微量でも検出できるため、非侵襲性の高精度診断バイオマーカーとして期待されている。

今回、肺癌患者の血清中microRNAを網羅的に解析し。その結果、切除可能肺癌で有意に変化する複数のmicroRNAを同定し、そのうち 2 種類のマイクロ RNA(miR-1268b と miR-6075)を組み合わせることで、切除可能肺癌患者を極めて高い精度(感度 95%、特異度 99%、AUC99.6%)で診断できることが明らかになった。

今後、血液中microRNAによる肺癌早期診断の実用化に向けて大きな前進が期待できる。