抗癌剤投与によって、癌細胞は死滅するが、障害された残存癌細胞はDNAを修復すること抗癌剤耐性を獲得する。

このDNA損傷の修復をコントロールする仕組みとして、RNA分解制御が重要であるとされており、癌細胞が外界の環境変化に応答するために、細胞内のmRNA量を制御する重要な因子がRNA結合タンパク質である。

今回、RNA結合タンパク質のなかでPUMILIO(PUM)が、癌細胞が抗がん剤シスプラチンで障害されたDNAを修復する機構をコントロールしていることを発見した。

8 RNA塩基を特異的に認識し、分解を促進するPUMは、約3,000種のmRNAと結合することがわかっている。

BRIC-seqにより、PUMを欠損させた細胞では、約100種のmRNAが安定化することが確認され、このうち48種のmRNAがPUMに結合するmRNAであった。

このPUMによるmRNA分解を抑制するような生理的条件を探索すると、シスプラチンなどDNA傷害を誘起する抗癌剤がPUMによるmRNAの分解を阻害することがわかり、さらに、PUMの標的mRNAの中でもPCNAやUBE2Aが安定化されることにより、損傷乗り換えDNA合成が活性化することが発見された。

実際にDNAの合成速度と細胞の生存率を測定した結果、シスプラチン投与下では、PUMの機能が阻害されることで、DNA合成が促進され、細胞の生存率が上昇した。

これらの結果から、細胞はDNA損傷時にPUMを消失させることでmRNAを安定化・増加させ、組み換えDNA修復を活性化し、細胞が生存できる確率を高めていることが明らかになった。

この研究成果は、「Cell Reports」オンライン版に掲載された。