ほとんどの子宮頸癌の発生原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染であり、予防としてHPVワクチンが開発されており、HPV感染予防には有効であるが、本邦におけるワクチン接種率は1%以下である。

そのため、20代から30代の子育て世代の罹患率が上昇しており、子宮頸癌はマザーキラーと呼ばれ深刻な問題となっている。

また、子宮頸癌に罹患し、再発進行すると化学療法、放射線療法は効きにくく、新たな治療法の開発が望まれている。

今回、末梢血由来のiPS細胞からウイルス抗原特異的キラーT細胞を作製することに成功し、子宮頸癌の新規治療法の可能性について報告された。

まず、子宮頸癌症例は抗癌剤や放射線などの影響でT細胞は減少し作製できないため、健常人ドナーの末梢血よりHPV特異的キラーT細胞を作製した。

また、SV40 large T抗原を使用せず他の2つの因子(LIN28とNANOG)を追加した結果、健常人ドナーの末梢血を使用して、HPV特異的キラーT細胞からiPS細胞を作製することに成功した。

この6因子を導入したiPS細胞から再びT細胞へ分化誘導したiPS細胞由来若返りHPV抗原特異的キラーT細胞は、子宮頸癌細胞株に対し持続的で強力な細胞傷害活性を示した。

次に、免疫不全マウスに子宮頸癌細胞株を腹腔内注射し、末梢血由来HPV抗原特異的キラーT細胞またはiPS細胞由来HPV抗原特異的キラーT細胞を注入した場合、iPS細胞由来HPV抗原特異的キラーT細胞で治療したマウスグループでは有意な腫瘍抑制効果を認めた。

さらに、iPS細胞由来HPV抗原特異的キラーT細胞は、末梢血由来HPV抗原特異的キラーT細胞に比較して有意な生存期間延長効果を認めた。

これにより、子宮頸癌の増殖を抑制するiPS細胞由来T細胞による新規治療法の開発が期待される。

本研究は米国遺伝子細胞治療学会雑誌であるMolecular Therapy に先行公開された。