毒物や酸化ストレスに曝された細胞内では、防御する役割をもつ転写因子Nrf2が活性化される。
肺癌の約20-30%には、Nrf2が常に活性化するような遺伝子変異が生じており、癌細胞は抗癌剤や放射線をストレスと判断し、これらの治療に対して抵抗性を獲得する。
今回、Nrf2活性化を伴う悪性腫瘍についても、周囲の正常細胞でのNrf2を活性化させることで、腫瘍を抑制する方法が報告された。
遺伝子組換え技術を用いて、Nrf2を抑制する機能を有するKeap1タンパク質の量を減少させることにより、Nrf2を全身で活性化させたマウスと、対照となる野生型のマウスに、Nrf2活性化肺癌を作成させた。
野生型マウスと比べて、全身でNrf2を活性化したマウスは、腫瘍の大きさが減少し、生存率が上昇した。
さらに、全身でNrf2を活性化したマウスにおいて、免疫細胞でのみNrf2を活性化させると、腫瘍抑制効果が減少したことより、特に免疫細胞におけるNrf2活性化が腫瘍抑制に重要であることが明らかになった。
これにより、予後不良の癌腫に対する新しい治療法の開発に結びつくものと期待される。
この研究成果は、米国癌学会の学術誌「Cancer Research」のオンライン版で公開された。