悪性中皮腫の主要因はアスベスト曝露であるが、曝露歴を有する人の内ごく一部が発症するため、環境要因と遺伝要因の相互的要因によって発症することが考えられる。
悪性腫瘍を多発するBloom症候群は、父母由来両アレルのBLM遺伝子が機能を失う変異により発症するが、片アレルのみの変異が及ぼす影響についても報告がなされた。
一般の悪性中皮腫症例中にも、本遺伝子の片アレル変異を有する症例が存在し、一般集団と比較すると有意に高いことが判明した。
片アレルのみBLM遺伝子ノックアウトマウスにアスベスト暴露すると、野生型マウスに比べ有意に死亡率や悪性中皮腫発症率が上がり、悪性中皮腫を発症しやすいことが示唆された。
また本マウスやヒト中皮細胞を用いた動物実験により、BLMが片アレル機能を失うことにより遺伝子やゲノムの不安定性を引き起こしたのみならず、炎症性サイトカインや炎症性マクロファージを高度に誘導し、高頻度腫瘍発症に寄与していることを明らかにした。
悪性中皮腫易罹患性遺伝子に生まれつき変異を持つ場合、カウンセリングを実施し、定期的な検診を実施することにより、早期発見できるよう研究しており、今後、本邦においても、大規模ゲノムDNA塩基配列解析により、将来の疾病リスクを予測し、対策を打つパーソナルメディシンに向かうことが期待できる。
国際的な医学雑誌「米国アカデミー紀要(PNAS)」に論文が掲載された。