アルファ線治療薬は、がん細胞表面に現れる特定の分子をターゲットしたがん治療方法で、効果が高く、周囲の正常細胞への障害が少ない放射線であるアルファ線を用いているため副作用の発生頻度も低い。

しかし、それらのターゲット分子はがん種によって異なることが多く、転移した部位では発現の程度がさまざまである。

LAT1 は、多くのがん種で発現していおり、がんの増悪度と相関している。

大型加速器を用いて、荷電粒子をターゲットに照射することでアルファ線放出核種であるアスタチン(At-211、半減期 7.2h 時間)を製造・分離精製を行い、その後、LAT1 高選択性の芳香族アミノ酸誘導体であるアルファメチルチロシンに結合させることにより、がん特異的に集積する注射薬(アスタチン標識アルファメチルチロシン: [At-211] AAMT)の製造に成功したことが報告された。

本治療薬を膵臓がんモデルマウスの静脈内に単回投与したところ、腫瘍に選択的に集積し、腫瘍の増殖抑制効果が認められた。

がん細胞を特異的にアルファ線で攻撃することにより、治療効果が得られることも明らかになり、また、正常細胞にはほとんど取り込まれないことも確認された。

またメラノーマの肺転移モデルにおいて、単回投与により転移を抑えることができることが示唆された。

今後、膵臓がんをはじめとする難治性がんにおける、画期的な治療法となることが期待される。

本研究成果は、米国科学誌「Cancer Science」に公開された。