TOP-GEARプロジェクトは、本邦におけるがんで多く変異が見られる遺伝子114個について、がんの組織と正常の組織を同時に調べることが可能ながん遺伝子パネル検査「NCCオンコパネル検査」を用いた小児肺がん男児2名についての遺伝子の解析結果が報告された。

男児の肺がんには本人以外の遺伝子配列が存在していることが明らかになった。

通常、他人由来の遺伝子が検出された場合は、検査の過程での汚染による可能性を疑うが、今回の場合、男児2名の母親はともに子宮頸がんを発症していたことから、男児の肺がんと正常の組織、母親の子宮頸がんと正常の組織について遺伝子を比較した。

その結果、男児の肺のがん細胞は2名ともに母親由来の遺伝情報を持っていることが明らかになり、さらに、男児の肺のがん細胞は、本来男性の細胞に存在するY染色体のない女性の細胞であることが判明し、また男児と母親のがんの両方から子宮頸がんの原因となる同じタイプのヒトパピローマウイルスの遺伝子が検出された。

以上より、男児の肺がんは母親の子宮頸がんが移行して発症したと考えられた。結論づけました。

今回のケースは、母親の子宮頸がんのがん細胞が混入した羊水を肺に吸い込むことによって、母親の子宮頸がんのがん細胞が子どもの肺に移行し、小児での肺がんを発症したと考えられる。

また、今回の小児がん患者の1名に対してニボルマブが投与され、がんが消失するほどの劇的な効果がみられ、がん細胞が本人ではなく母親由来であったため、子どもの免疫細胞が、がん細胞を異物として認識し免疫応答が高まったと考えられる。

これにより、小児がんの検査で他人由来の遺伝子配列が検出された場合は、母親のがん由来である可能性と、母親のがんが移行した小児がん患者においては、免疫チェックポイント阻害治療が有望な選択肢になる可能性が示唆された。

本研究成果は、国際学術誌「The New England Journal of Medicine」に発表された。