卵巣や精巣などの生殖細胞由来の腫瘍であるテラトーマ(奇形腫)は、3胚葉性の組織様に細胞が分化する特殊な癌であるが、発生原因は明らかでない。

今回、新たな3つの原因遺伝子領域が同定された実験結果が報告された。

ゲノム全体のタンパク質コード領域のDNA配列決定により、ett1領域に存在するMC4R遺伝子に一塩基置換の変異を発見し、この変異がテラトーマの原因となっているのかを検証するため、ゲノム編集技術を用い、この変異を精巣性テラトーマを発症しないLT系統のマウスに導入した。

さらに、Dnd1遺伝子変異との関連を調べるため、Dnd1遺伝子変異マウスとMC4R遺伝子変異ノックインマウスの交配により誕生させた2つの遺伝子変異をもつマウスでの精巣でのテラトーマ発症の有無を調査した。

その結果、MC4R遺伝子変異ノックインマウスや2重変異のマウスでは卵巣に巨大なテラトーマを発症することが発見された。

これまで未解明であった卵巣性テラトーマの原因遺伝子が初めて明らかになり、さらにDnd1遺伝子変異が卵巣性テラトーマの原因ともなることが分かり、テラトーマ発症原因に雌雄での共通性が存在することも明らかになった。

今後、卵巣性テラトーマ発症メカニズム解明が進み、テラトーマ発症の予防法などの技術開発に役立つことが期待される。

また、卵細胞の賦活化の仕組みの解明にも繋がり、不妊治療への波及効果をもたらすと考えられる。

本研究成果は、科学雑誌サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)に掲載された。