今回、理化学研究所(理研)革新知能統合研究センター目的指向基盤技術研究グループがん探索医療研究チームらの国際共同研究グループは、卵巣がん患者の検体から取得した遺伝子発現情報に関するビッグデータを、さまざまなアルゴリズムを用いてコンピュータでビッグデータ解析し、卵巣がんの新しい治療標的として、「LKB1-MARK3経路」を同定した。

その結果、正常組織に比べて、がん組織ではLKB1-MARK3経路の遺伝子の発現が抑制されており、その遺伝子発現量の低下が臨床予後の悪化に関わることが明らかになった。

また、LKB1-MARK3経路が、タンパク質合成経路に関わる代謝性ストレスに応答して細胞周期G2/M期停止を誘導する細胞周期チェックポイントであることもわかった。

以上より、LKB1-MARK3経路が機能異常に陥っている卵巣がんは、代謝性ストレスに対する脆弱性が高まり、予後不良を引き起こすと考えられる。

これにより、卵巣がんのうち最も死亡者数の多い「高異型度漿液性卵巣がん」の新しい治療法の開発につながると期待できる。

本研究は、科学雑誌『Communications Biology』オンライン版に掲載された。