原発性肝がんのなかでも、肝内胆管がんは、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を含む慢性肝疾患がそのリスク因子とされているが、発症機序には不明な点が多く、有効な治療方法も限られているため、非常に予後不良な難治性がんである。

今回、大阪大学医学部附属病院と米国MDアンダーソンがんセンターの研究グループは、トランスポゾンがランダムに次々と遺伝子変異を生じさせる技術を使用して、肝内胆管がんや混合型肝がんのがん抑制遺伝子としてTRAF3遺伝子を新たに同定した。

また、TRAF3遺伝子の機能が低下することにより、肝細胞が高い増殖性を有する胆管細胞へと分化転換し、肝内胆管がん発症に至るという新たな発症機序を解明した。

さらに、その制御分子としてTRAF3のシグナル伝達経路の下流に存在するNIK遺伝子を同定し、NIK遺伝子の抑制により肝内胆管がんの増殖・腫瘍形成が阻害されることを発見した。

また、TRAF3/NIK経路の分子異常が生じている肝内胆管がん患者はその生命予後が極めて不良であることも明らかにした。

本研究により、TRAF3/NIK経路が、肝内胆管がん治療の新規標的となることが期待される。

本研究成果は、米国科学誌「HEPATOLOGY」に公開された。