肝細胞がんは再発率が高く予後不良な難治性がんである。

進行性肝細胞がんに対しては、抗PD-L1抗体/抗VEGF抗体の複合免疫療法を中心に様々な薬物療法が行われている。

しかしながら、その効果は限定的であり、各薬剤の治療効果を予測できるバイオマーカーが求められているが、現状、肝細胞がんにおける複合免疫療法の治療効果を予測できるマーカーは存在しない。

今回、大阪大学医学部附属病院の研究グループは、100例を超える非B非C型肝細胞がん患者の切除検体を用いてマルチオミックス解析を実施し、予後や腫瘍内の免疫動態に基づいて肝細胞がんを層別化することに成功した。

また、飽和脂肪酸であるパルミチン酸が、がん細胞自身のPD-L1発現を増強させることに加えて、M2マクロファージとがん関連線維芽細胞の抗腫瘍免疫抑制効果を増強させることで細胞傷害性T細胞に疲弊を誘導する可能性を明らかにした。

これにより、がん細胞内の脂肪滴貯留という特徴を有する脂肪含有肝細胞がんが免疫チェックポイント阻害剤の効果を得られやすい免疫疲弊の状態にあることが示唆され、MRI画像により腫瘍内脂肪蓄積を認めた症例では、アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法の効果が良好となることも明らかにされた。

これらの結果により、脂肪含有肝細胞がんが免疫チェックポイント阻害剤を含んだ複合免疫療法に高い感受性を示すことから、MRI画像を用いた腫瘍内脂肪蓄積の定量化により、複合免疫療法の治療効果が予測できる可能性が示唆された。

本研究成果は、米国科学「HEPATOLOGY」に公開された。