がん細胞表面には、栄養源であるグルコース供給を担う「グルコース輸送体」が異常に多く存在しており、過剰のグルコースを取り込み、急速な増殖を行っている。

そのためグルコース輸送体は抗がん治療の標的分子と考えられているが、直接その機能を抑制する化合物は正常細胞のグルコース取り込み能も阻害するため副作用が問題となる。

今回、富山大学 学術研究部 薬学・和漢系 薬物生理学研究室らの研究グループは、心不全治療薬として臨床で使用されている強心配糖体が、がん細胞の栄養源である「糖(グルコース)」の供給システムを強力に抑制することを初めて明らかにした。

強心配糖体のジゴキシン、ウアバイン、オレアンドリンが、がん細胞の細胞内に特異的に存在する「α3 型ナトリウムポンプ小胞」に作用することにより、グルコース輸送体の量を顕著に減少させることを発見した。

このメカニズムによって、強心配糖体が、正常細胞には影響を与えず、がん細胞へのグルコース供給を選択的に遮断し抗がん作用を発揮する。

今後、新規メカニズムのがん治療薬の開発に向けた画期的な基盤になると考えられる。

本研究成果は、国際科学誌「Journal of Cellular Physiology」のオンライン版に掲載された。