がん組織内には様々な遺伝子の傷を持ったがん細胞が混在するため、抗がん剤治療により薬が効かない細胞が残存する腫瘍内不均一性が発生する。

これまで、離れた部位のがんが異なる遺伝子の傷を獲得することにより腫瘍内不均一性を示すことは明らかになっていたが、遺伝子の傷が均一であるはずの1か所のがん組織の中に腫瘍内不均一性があるのかは分かっていな近年開発されたシングルセル遺伝子発現解析により、がん組織をばらばらにした後に、細胞の一つ一つについて全遺伝子の発現を丁寧に調査するために、がん細胞そのものや周辺の免疫細胞や血管細胞などの数や性質を詳しく知ることが可能となっている。

今回、横浜市立大学大学院医学研究科 泌尿器科学、同大学先端医科学研究センター と理化学研究所らの共同研究グループは、新しい技術であるシングルセル遺伝子発現解析を用いて、腎臓がんが、①様々な種類の腎臓細胞から生まれてくること、②様々ながん微小環境を作り出すこと、③1か所のがん組織の中に様々な性質のがん細胞が混在していること(腫瘍内不均一性)を発見した。

これにより、腎臓がんの複雑な発生メカニズムの解明と、進行性腎臓がんに対する薬物療法の効果を高める方法の開発につながることが期待される。

本研究成果は、Cell Press「iScience」に掲載された。