ATLLはhuman T-cell leukemia virus type 1(HTLV1)感染者の一部に生じる、日本人での発症頻度が比較的高いT細胞性の悪性リンパ腫である。
ATLLは既存の治療に対する反応性が乏しい難治性の疾患で、新しい視点からの治療法の開発が求められている。
今回、北海道大学大学院医学院と同大学大学院薬学研究院らの研究グループは、難治性T細胞性悪性リンパ腫「成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)」のNK細胞免疫からの耐性機序を解明した。
新規ゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9を用いてATLL細胞株内の約20,000種類の遺伝子を網羅的にノックアウトさせ、どの遺伝子が最もATLLのNK細胞免疫に重要な役割を担っているかを機能的にスクリーニングした。その結果、ATLL細胞の表面に発現するCD48がNK細胞からの攻撃に対する感受性に重要な役割を果たしていることを見出した。
さらにATLL細胞では正常なリンパ球と比較してCD48の発現が低下していることを発見した。
これらの結果からATLL細胞は自身のCD48の発現を低下させることで、NK細胞からの免疫を回避し、悪性腫瘍の形質を獲得していることが示唆された。
そして、ATLL以外のT細胞性の悪性リンパ腫においても、正常なリンパ球と比較してCD48の発現量が低下しており、予後との関連も示すことができた。
以上より、ATLL以外のT細胞性の悪性リンパ腫においてもCD48の発現量がNK細胞免疫からの逃避に重要な役割を担っていると考えられ、T細胞性の悪性リンパ腫のCD48発現が免疫療法の治療効果予測に繋がることが期待される。
本研究成果は、Blood誌にオンライン掲載された。