今回、ゲノム編集技術とiPS細胞を組み合わせた悪性神経膠腫に対する新規治療法についての報告がなされた。

慶應義塾大学医学部脳神経外科学教室らの研究グループは、ヒトiPS細胞由来の神経幹細胞(Neural stem cell:NSC)が、まわりの組織に広がっていく浸潤性のグリオーマ幹細胞(Glioma stem cell:GSC)に向かって移動することを証明し、NSCを遺伝子の「運び屋」として治療応用する研究を進めている。

ゲノム編集技術を用いてiPS細胞に治療遺伝子を組み込み、治療用NSCに誘導後、脳内に移植することにより、難治性のGSCモデルマウスに対して顕著な抗腫瘍効果を示すことを明らかにした。

本治療法では、無毒なプロドラッグを投与することにより、移植した治療用NSCも自滅するため、NSC自身の腫瘍化リスクを回避でき、治療用NSCは、脳内に広範囲に広がった治療が難しい浸潤性・治療抵抗性のGSCを効率的に殺傷できる可能性がある。

本研究成果は、米科学誌 Bioengineering & Translational Medicine (オンライン版)に掲載された。