Bexaroteneは核内受容体の1つであるレチノイドX受容体(RXR)作動性物質であり、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫の治療薬として使用されている。

また、本薬は様々な炎症疾患モデル動物での治療効果が報告されており、その適応を広げる「ドラッグリポジショニング(DR)」が期待されている。

しかしながら、bexaroteneは催奇形性を生じることから、bexaroteneのDR、またbexaroteneの標的であるRXRを対象とした創薬研究は停滞している。

催奇形性の原因は様々ですが、一因として当該物質の胎盤通過能が考えられるが、どのような催奇形性が生じるのか、また胎盤通過能・胎児移行性は明らかとなっていない。

今回、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科は、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫の治療薬のbexarotene(タルグレチン®)により生じるラット胎仔での催奇形性を調べ、その原因の1つとして本薬物の胎児移行性を明らかにした。

妊娠ラットを用いてbexaroteneにより生じる胎仔の骨格異常を詳細に調べ、また、bexaroteneをPETイメージング用の放射性標識体に変換し、妊娠ラットへ投与することにより、本薬物の胎盤通過性・胎仔移行性を明らかにした。

本研究成果は、RXRを標的とした医薬開発に有用な知見を提供することに加えて、基礎研究と臨床をつなぐトランスレーショナル・サイエンスに貢献するものと期待される。

本研究成果は、「ACS Pharmacology & Translational Science」に公開された。