近年「単分子検出」という、生体内の分子ひとつを直接検出し識別する技術が脚光を浴び単分子検出によって新たな医療診断技術が生まれるものと期待されている。

実際に、DNA に対しては DNA ひとつを検出する技術を応用した遺伝子解析法がすでに実用化され、検査の劇的な高速化と低コスト化がもたらされた結果、個別化医療が実現されつつある。

一方、タンパク質は約 20 種類ものアミノ酸から構成された複雑な化学構造をもち、また立体構造も多様であるため、その単分子検出技術開発は困難である。

DNA は PCR 法によってその複製を比較的簡便に作製できるのに対して、タンパク質にはそのような手法がなく、きわめて微量な試料でも分析できる単分子検出の利点は大きい。

今回、東京工業大学 理学院 化学系と北海道大学と神戸大学らの研究チームは、簡便な電気計測によってタンパク質 1 分子の代表的な翻訳後修飾である「リン酸化の単分子検出法」を開発した。

検出は、1 nm 以下の間隙を隔てて対向した電極対を用いた電流計測に基づいており、簡便で迅速な測定が可能である。

リン酸化は、がんの増殖や抗がん剤の感受性に深く関与していることから、今回開発した手法を利用してリン酸化を検出し解析することによって、それぞれのがん患者個人に合わせた最適ながん治療の実現が期待される。

本研究成果は、「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載され、Supplementary Cover に選出された。