肝臓は様々な臓器由来のがん細胞が転移しやすい臓器である。
転移初期段階ではがん細胞が微小環境と相互に作用して転移を助長している可能性が報告されているが、そのメカニズムの全容は明らかではない。
肝臓の肝類洞内皮細胞(LSEC)には小孔が無数に開いており肝臓の機能維持に寄与しているが、病理学的条件下ではLSECの小孔が破壊されギャップ(iGap)形成が生じることから、LSECのiGapが肝臓への転移に関わっている可能性が考えられる。
今回、大阪公立大学大学院 医学研究科 肝胆膵病態内科学と獣医学研究科らの研究グループは、がん細胞が肝臓へ転移する経路を特定し、それに関わる分子機構を明らかにした。
肝転移マウスモデルを作製しオミックス解析を行ったところ、がん細胞がLSECと相互作用するとLSECでMMP9、ICAM1、炎症性サイトカインの発現が誘導され、LSECのiGap形成が促進されることが明らかになった。
さらに、電子顕微鏡と三次元形態観察を用いてがん細胞がLSECへ直接突起を伸ばしiGapから肝実質内へ侵入すること、LSECのiGap形成数とがん細胞を脾臓経由で注射後に肝臓に形成された腫瘍数とが正の相関を示すことを明らかにした。
これにより、肝臓へのがん転移の予防や治療薬の開発に繋がると期待される。
本研究成果は、『Science Advances』にオンライン掲載された。