今回、国立研究開発法人国立がん研究センターと名古屋大学の研究チームは、生検組織などの微量ながん組織を用いた 1 細胞レベルの解析手法を用いて、血液や正常肺組織、非小細胞肺がんの組織に存在する制御性 T 細胞の網羅的解析を行い、がんの組織に存在する制御性 T 細胞が特徴的なクロマチン構造と遺伝子発現制御機構を持っていることを見出した。

さらに、転写因子の BATF が、クロマチン構造をリモデリングする機能を介して、がん組織における制御性 T 細胞の活性化プログラムの中核を担っていることを発見した。

PD-1/PD-L1阻害薬を始めとした免疫チェックポイント阻害薬は、2014 年に悪性黒色腫で保険適用されて以降、肺がんや胃がんなどの多様ながん種の治療に用いられているが、PD-1/PD-L1 阻害薬の治療効果の認められる症例は全体の 2 割程度と少なく、治療が奏効しないメカニズムの探求と、そのメカニズムに基づく新たな治療法の開発が求められている。

本研究結果により、がんの組織内の制御性 T 細胞の多様性と、がん組織内で制御性 T 細胞が活性化していくプログラムを解明され、今後、制御性 T 細胞を標的とした、新規のがん免疫治療の開発につながることが期待される。

本研究成果は、米国科学雑誌「Science Immunology」に掲載された。