悪性腫瘍は、細胞内に存在する遺伝暗号が異常な配列に置き換わり、蓄積することによって発症する。

遺伝子配列を大量に読み取ることのできる装置である次世代シークエンサーにより、悪性腫瘍に関係する遺伝子配列異常の解析が飛躍的に進歩した。

急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)と呼ばれる血液悪性腫瘍においても、発症に関わる遺伝子配列異常の大半が判明している。

一方で、血液細胞にそうした遺伝子配列異常が起きた際、細胞の中でどのような変化が生じ、最終的にAMLやMDSの発症に至るのかという機序については、まだ多くが明らかにされていない。

今回、熊本大学大学院生命科学研究部らの研究グループは、AML・MDSの原因遺伝子のひとつとして知られるDDX41遺伝子に注目し、この遺伝子の異常が細胞にもたらす障害の詳細を解析した。

これにより、遺伝子異常に伴って細胞内のDDX41タンパク質が減少するために、RNAスプライシングと転写伸長という、本来協調的に行われるべきふたつの重要な生命現象の連携が損なわれ、DNA複製障害を介して血液細胞の産生障害を起こすことを明らかにした。

今後、本遺伝子異常を有するAML・MDSの治療戦略の確立に貢献することが期待できる。

本研究成果は、科学雑誌「Leukemia」にオンライン掲載された。