難治性で悪性度の高いトリプルネガティブ乳がん (TNBC)は、特異的な治療標的がなく、がん細胞の性質も極めて不均一で、有効な治療法が限られているため、他の乳がんサブタイプに比べて生存率が低い。
今回、東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の研究チームは、TNBCにおいて、乳腺に常在するマクロファージを枯渇・阻害することで、がん細胞の再発・転移を抑制できること明らかにした。
乳がんに共通した治療標的として、組織常在性マクロファージに注目し、乳腺マクロファージの腫瘍への侵入を阻害剤で抑制すると、腫瘍の増殖が著しく抑制されることを見いだした。さらに、マウス乳がん再発モデルを用いて、乳がん切除後に切除部位の乳腺のマクロファージを阻害することで、再発と遠隔転移を顕著に抑制できることを示した。
本研究成果は、再発のリスクを減らすために全乳房を摘出する手術を選択することが多い難治性の乳がんにおいて、乳房温存療法への選択を容易にすることにつながる知見を提供している。また、各組織に存在する組織特異的なマクロファージが、がんの発生に寄与していることを強く示唆しており、それらのマクロファージを特異的に攻撃する細胞標的治療法が確立できれば、現在有効な治療法のない難治性がんの治療に新たな道を開くことが期待できる。
本研究成果は、「Communications Biology」にオンライン掲載された。