静脈血栓塞栓症は、深部静脈血栓塞栓症と肺塞栓症の総称であり、いわゆる「エコノミークラス症候群」とも言われる。

下肢にできた血栓が心臓から肺動脈に移動すると呼吸困難を引き起こし突然死の原因となる。

悪性神経膠腫の術後に発生する静脈血栓塞栓症の早期発見は重要である。

新潟大学脳研究所脳神経外科分野の研究グループは、株式会社LSIメディエンスとの共同研究で、予後不良とされるイソクエン酸脱水素酵素遺伝子(IDH)野生型の悪性神経膠腫(こうしゅ)の術後に合併する静脈血栓塞栓症の機序と早期発見・予測のための指標(バイオマーカー)を同定することに成功した。本研究グループは、既にIDH野生型悪性神経膠腫では組織中にPodoplanin(PDPN、ポドプラニン)というタンパク質の発現が高く、PDPNの発現が高い症例では術後の静脈血栓塞栓症の合併頻度が高いことを報告している。

PDPNは血小板表面のレセプターであるCLEC-2と結合し、血小板活性を惹起する。今回の研究では、悪性神経膠腫患者の術後早期に血液中のCLEC-2(可溶型CLEC-2)を測定し、IDH野生型の患者で値が上昇しており、さらには静脈血栓塞栓症を合併した患者では顕著に上昇していたことがわかった。

特に可溶型CLEC-2値を血小板数で割ったC2PAC指数が術後静脈血栓塞栓症を合併した患者で上昇しており、静脈血栓塞栓症予測の有用なバイオマーカーであることが判明した。

本研究の結果より

①PDPNの発現量が高いIDH野生型悪性神経膠腫の術後で可溶型CLEC-2値、C2PAC指数 が上昇していることが判明した。

②静脈血栓塞栓症を合併した際、可溶型CLEC-2値、C2PAC指数が上昇しており、IDH野生型悪性神経膠腫症例の静脈血栓塞栓症発症に血小板活性が強く関わっていることが判明した。

これにより、凝固系の亢進の前段階に血小板の活性化も強く関与していることが示唆され、IDH野生型悪性神経膠腫症例に合併する静脈血栓塞栓症の病態解明に繋がった。

また、術後に可溶型CLEC-2値を評価することで静脈血栓塞栓症合併をより早期に予知・発見するが可能となり、臨床におけるより安全な術後管理に寄与できることが期待される。

本研究成果は、国際科学誌 Thrombosis Research誌 に掲載された。