胃がんは、日本における罹患者数 (2019年)と死亡数 (2021年)がともに3位と上位に位置する対策が極めて重要ながんである。

胃がんは病理組織学的には、大きく腸型(intestinal type)とびまん型(diffuse-type)に分類される。

胃がんの治療は、内視鏡や手術による切除・細胞障害性抗がん剤治療に加えて、HER2といったがん遺伝子を標的とした分子標的治療薬やゲノム変異が多い症例(高度変異胃がん)に対する免疫チェックポイント阻害剤によって、年々予後は改善しているが、スキルス胃がんに代表されるようなびまん型胃がんについては未だに予後が不良で、有効な治療法の開発が期待されている。

また胃がんの発生要因としては、ピロリ菌感染並びにEBウイルス (Epstein-Barr virus: EBV)感染が重要なリスク因子で、特にピロリ菌感染を契機とした慢性胃炎は発がんの温床となり、炎症に伴う再生性変化が腸型胃がんの発症と強く関連している。

一方でびまん型胃がんについては発症要因については未解明であり、予防に向けた原因解明が強く期待されている。

今回、国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所がんゲノミクス研究分野と国立大学法人東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センターゲノム医科学分野を中心とする研究チームは、国際がんゲノムコンソーシアム (ICGC-ARGO)における国際共同研究として、日本人胃がん症例697症例を含む総計1,457例の世界最大となる胃がんゲノム解析を行い、新たな治療標的として有望なものも含めこれまでで最大の75個のドライバー遺伝子を発見した。

またこれまで原因不明であったびまん型胃がんについて、飲酒に関連したゲノム異常がその発症に関連することを初めて明らかにした。また胃がんに対する免疫治療における新たなゲノムバイオマーカーも16個同定した。

びまん型胃がんを含め、日本人胃がんにおける治療標的となるドライバー遺伝子や免疫療法の予測因子となりうるゲノムバイオマーカーの全体像を解明し、これらのデータは、今後本邦における胃がん治療法開発や予後改善に貢献することが期待される。

本研究成果は、米国科学雑誌「Nature Genetics」に掲載された。