がんが進行すると、がん細胞から離れた臓器や全身に悪影響が現れる「がん悪液質」と呼ばれる筋肉や脂肪の減少といった全身症状は進行がん患者の80%以上に認められ、予後に悪影響を及ぼす。

今回、理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター 動的恒常性研究チームは、ショウジョウバエを用いた実験により、がん細胞が分泌する「ネトリン」というタンパク質ががんによる全身症状の発症に関わっていることを明らかにした。

ショウジョウバエ幼虫の将来眼になる組織に発生させたがん細胞から、タンパク質のネトリンが分泌されることを発見した。

ネトリンは、がん細胞から離れた脂肪体と呼ばれる組織に作用し、全身の脂肪酸代謝の恒常性を乱している。

一方、がん細胞からのネトリン分泌や脂肪体組織におけるネトリンの作用を阻害すると、がん細胞自体には影響はなかったものの、個体の生存率が上昇することが分かった。

これにより、多くの進行がん患者に認められる「がん悪液質」という筋肉や脂肪の減少といった全身症状の基本的な仕組みの理解に貢献すると期待できる。

本研究成果は、科学雑誌『The EMBO Journal』オンライン版(5月4日付)に掲載された。