食道がんは難治性がんの一つとされており、主軸の治療である手術の後にも高い割合(進行癌で約半数)で再発を来す予後不良の疾患である。

また近年では免疫治療の目覚ましい発展によって食道がんにも免疫チェックポイント阻害剤(ICI)治療が保険収載されたが、ICI単剤での奏効率は10-20%と低いことから、治療効果予測が治療戦略を立てる上で重要な課題となっている。

食道がんの辺縁部に後天的に形成される三次リンパ様構造(TLS)とよばれる異所性リンパ器官 は慢性炎症下に後天的に発生する免疫細胞の集合体であり、リンパ球を「教育・活性化」する臓器であるリンパ節と同様に、がん局所において抗腫瘍免疫応答を高める場と考えられている。

一方で一部の癌腫ではTLSは腫瘍促進的に機能するとの報告もあり、一義的でなく未知な部分も多いのが現状である。

今回、大阪大学大学院医学系研究科らの研究グループは、TLSを評価することで、手術後の生命予後を予測し得ることを発見した。

食道がん患者の腫瘍辺縁に存在するTLSの発現と成熟性を定量的に評価し、TLSの発現および成熟性が腫瘍進行度とは独立して患者予後を強く規定することを明らかにした。

とくに成熟したTLSでこの傾向が強く、これには成熟TLSを構成するCD138陽性形質細胞が関与している可能性が示唆された。

さらに、初回手術時の切除標本におけるTLSを評価することで、のちに術後再発をきたした際に、ICI治療が効果的かどうかの予測に役立つことを明らかにした。

本研究成果は、英国科学誌「British Journal of Cancer」(オンライン)に公開された。