エクソソームを含む細胞外小胞(EV)は、ヒトのあらゆる体液中に存在し、細胞間コミュニケーションに不可欠なツールである。

また、疾患に応じて搭載する分子に変化が生じるため、有望な疾患バイオマーカーとして期待されている。

EVにおいて、表面に存在する膜タンパク質は、特定のEVを検出するのに、またそれ自体がバイオマーカーとして利用できるため極めて重要だが、卵巣がんにおける特異的なEV膜タンパク質は明らかになっていない。

卵巣がんは予後の悪い女性生殖器悪性腫瘍で、早期発見が極めて困難ながんの1つであり、高精度高感度なバイオマーカーの開発が急務となっている。

今回、名古屋大学 医学部附属病院 産科婦人科と東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系、北海道大学大学院工学研究院、国立がん研究センター 研究所 病態情報学ユニット、慶應義塾大学 薬学部 薬物治療学講座、東京医科大学 医学総合研究所らの研究グループは、卵巣がんエクソソームにおける特異的な膜タンパク質を網羅的プロテオミクスにより新しく同定し、かつ、エクソソーム分離方法としてポリケトン鎖修飾ナノワイヤを開発した。

卵巣がんにおけるEVを対象に、詳細なタンパク質量解析を行うことで、卵巣がんEV関連膜タンパク質である、FRα、Claudin-3、TACSTD2を同定し、また、EVを捕捉する手段の1つであるナノワイヤを応用し、ナノワイヤをポリケトン鎖修飾することでEV結合性を高め、より純度の高いEVを捕捉することを可能にした。

これらの知見を組み合わせた方法を用いることで、卵巣がん患者におけるEVを利用した新しい検出方法を開発しました。これらの研究結果は、卵巣がんに対する新しいバイオマーカーとして期待される。

本研究成果は、学術雑誌「Science Advances」の電子版に掲載された。