肝がんの死亡者数は、全がん中世界では第3位、日本では第5位であり、難治性のがんと考えられている。
肝がんでは、発がんに関与するWntシグナル経路の異常活性化が1/3の症例で認められる。
大腸がんでも高頻度にWntシグナルが異常活性化されており、そのがんを引き起こすメカニズムが明らかになりつつあるが、肝臓がWntシグナルの異常によりがん化する経路については十分に解明されていない。
今回、大阪大学大学院医学系研究科と感染症総合教育研究拠点らのグループは、肝がんと大腸がんではWntシグナルが異常である細胞の「成熟度」が異なる点に注目し、Wntシグナルが異常となった際のがん細胞の反応の違いについて、肝がん発症の新たな仕組みを解明した。
肝がんではがん化を促すWntシグナルの異常な活性化が高頻度でみられるが、これらの症例には免疫チェックポイント阻害剤が効きにくいことが知られている。
しかし、肝がんにおいてWntシグナルががん化を促進するのかは十分にはわかっておらず、またWntシグナルを直接抑えることができる治療薬の開発には至っていない。
Wntシグナル活性型肝がんを発症させる遺伝子としてGREB1を同定し、さらにGREB1の発現を抑制するための修飾型アンチセンス核酸を開発し、肝がんを発症したモデルマウスに投与したところ、腫瘍形成阻害の効果があることもわかった。
本研究成果は、米国科学誌「Cancer Research」にon line公開された。