脳神経細胞(ニューロン)は神経膠細胞により支持されており、神経膠細胞から発生する悪性腫瘍は神経膠腫(glioma)と呼ばれ、成人の悪性脳腫瘍の中で最も多く見られる。そのなかで、神経膠腫の40%を占める膠芽腫(glioblastoma)は進行速度が速く予後不良である。
今回、脳脊髄液(CSF)中の腫瘍由来DNAの検出によって、一部の神経膠腫における腫瘍増殖を追跡調査できることが発表された。
従来は、神経膠腫の分類のための脳組織採取を行っていたが、この液体生検法は、侵襲を最小限に抑えた方法であり、今後の神経膠腫治療指針のひとつとなる可能性がある。
神経膠腫は成長過程において、そのゲノムが変化するため、神経膠腫の増殖を監視する際には、繰り返しの生検が必要となる。
腫瘍DNAを解析するために、神経膠腫組織を外科的に採取するよりも液体生検のほうが非侵襲的であるが、遺伝情報を血液試料から検出することは非常に困難である。
今回、CSF中の神経膠腫由来DNAを広範に取得できる可能性のあることが実証された。
腰椎穿刺によって、85人の神経膠腫患者のCSFを採取した結果、ほぼ半数(42人)のCSFから腫瘍由来DNAが検出され、腫瘍のサイズ、プログレッション、および疾患転帰との関連性が認められた。
また、CSFから循環血液中の腫瘍DNAが検出された患者の死亡リスクは、4倍であり、CSFから検出された遺伝物質に腫瘍ゲノムが正確に反映されていると指摘している。
また、全ての神経膠腫において、CSF中から腫瘍由来DNAが検出されるわけではないと付言する一方で、腫瘍由来DNAの存在が脳腫瘍の進行の早期指標となる可能性があるという考えを示唆している。