メチオニンは体内で産生できないアミノ酸である必須アミノ酸のひとつで、代謝において重要な役割を果たす。
1炭素代謝という一連の反応において代謝され、この反応は化学療法や放射線療法などの数々の癌治療の標的にもなっている。
今回、マウスの動物実験で、食餌からメチオニン摂取量を制限すると、腫瘍の増殖が抑制され、化学療法や放射線療法の転帰が改善されることが明らかになった。
また、ヒトにおいても食餌に含まれるメチオニンの量を低下させることで代謝に及ぶ効果は、マウスの場合と同様の結果であった。
低メチオニン食に対する反応が、ヒトとマウスの間で保存されている可能性が示唆されている。
今回、食餌におけるメチオニンの摂取制限が、1炭素代謝を標的とする他の治療法との相互作用を通じて癌増殖抑制作用を有するのか調べたデータが報告された。
一連の癌モデルのマウスにおいて、マウスの食餌中のメチオニン濃度を低下させると腫瘍の増殖が抑制され、5-FU用いた化学療法や放射線療法を併用した場合にも、腫瘍の増殖は抑制された。
また、ヒト予備的臨床研究も行われ、摂取量を83%減少させた低メチオニン食を与えた場合、代謝物濃度が、同じ食餌制限を受けたマウスで見られた濃度と相関することを明らかになった。
この知見は、メチオニンを含めた特異的な食餌療法が、癌の増殖・転帰に影響を及ぼす可能性のあることを示唆すると考えられ、アミノ酸のような日常の食生活と直結する重要成分が、実際に癌の発生・増殖に関連すると思われる。