癌の発生はまず一つの細胞に変異が生じることから始まる。

新たに生じた変異細胞は周りの正常細胞との競合の結果,体外へ排除されることが明らかになってきているが、そのメカニズムについては明らかになっていない。

今回、癌化の超初期段階で起こる現象が解明された。

マウスを用いた動物実験で、変異細胞が正常細胞層から排除される時の細胞内のカルシウムイオン濃度を解析すると、変異細胞から周囲の正常細胞に向かってカルシウムイオンが同心円状に伝播する。

そして、このカルシウムウェーブを受けた正常細胞が変異細胞に向かって押し寄せるように動くことによって、変異細胞の排除を促進して いることが明らかになった。

変異細胞の排除に伴うカルシウムウェーブは、マウスだけでなく哺乳類培養細胞層及びゼブラフィッシュの皮膚細胞層の両者で同様に観察されることから、進化の過程で保存された普遍的な現象であることが示唆される。

本研究結果は2020 年 1 月 31 日(金)公開の Current Biology 誌に掲載された。

この研究成果をさらに発展させることによって、世界初の「がん予防薬」の開発へつながることが期待される。