腹腔内臓器とは、袋状に覆われた腹膜内にある胃・肝臓・大腸などの臓器のことである。
例えば、胃粘膜内に発生した癌は胃内腔へ増殖していくと同時に胃壁内下層へ浸潤していき、やがて外側漿膜を突き破り腫瘍細胞が飛び散り、腹膜のさまざまな場所に付着する腹膜播種と呼ばれる。
腹膜播種は胃癌においてリンパ節転移や肝転移と並んで最も頻度が高い転移の一つであり、特にスキルス胃癌では発見時にすでに腹膜播種があることも少なくない。
胃癌は、本邦の癌死亡者数の第3位と高頻度で、5年生存率は約60%の悪性度の高い癌であり、死因は、手術後の再発が大きく影響し、なかでも、癌細胞が腹膜腔に散らばる腹膜播種再発が最も多く、胃癌再発の約40%を占める。
今回、T3レベルの進行胃癌患者を対象として、胃漿膜表面から癌細胞までの距離を、高性能顕微鏡を使ってマイクロメートルレベルで測定を行い、その結果、腹膜表面から癌細胞までの距離が、ある基準より近くなると腹膜播種再発のリスクが高まることが発見された。
腹膜播種再発患者の平均DIFSは156㎛、再発していない患者の平均DIFSは360㎛で、特に、234㎛を境界としてDIFSが234㎛より短い胃癌患者は、明らかに腹膜播種再発を起こす頻度が高く、予後が不良であった。
この検証結果より、腹膜播種再発のリスク値はDIFS 234㎛であることが分かった。
この検査は、わずか1分程度でDIFS測定が可能であり、術後の胃癌患者に対してこの測定を行うことで、再発リスク分類による抗癌剤治療決定に役立つことが期待される。
この研究成果は、科学雑誌PLOS ONEにオンライン掲載された。