リアルタイムPCRはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅をリアルタイムに測定することで増幅率において鋳型となるDNAの定量を行う方法である。この定量は、二本鎖DNAに特異的に挿入して蛍光を発する色素 (SYBR green I) を用いる方法と、DNA配列に特異的なオリゴヌクレオチドに蛍光色素を結合させたプローブを用いる方法がある。
これに代わり、デジタルPCRは、核酸の検出と定量に対する新しいアプローチであり、従来のリアルタイムPCRに代わって、絶対定量や希少対立遺伝子検出を行うことができ、また単一のDNAやcDNAサンプルを分割しながらPCR反応を行うことも可能である。
今回、神経芽腫における病期や再発の診断に、リアルタイムPCRよりデジタルPCRが優れていることが発表された。
高リスク神経芽腫患者では、その半数以上に再発が見られ、長期生存割合も40%台に過ぎない。治療効果の維持や長期生存には、治療後に残存する病変の消失・不活化が重要であり、これまでに多数のモニタリング法が報告されている。
これまで癌幹細胞と非癌幹細胞の両者を含む神経芽腫細胞で高発現する数種類のマーカーを測定していたリアルタイムPCRより高感度で再現性の高いデジタルPCRを用い、より正確に病変を把握し、神経芽腫細胞で高発現するマーカーの中から、特に再発に関する癌幹細胞で高発現する7種類のマーカーを選び、定量したことが報告された。
デジタルPCRで定量した7種類のマーカー全てを組み合わせた発現量は、各々のマーカーの発現量よりも、正確に高リスク神経芽腫の診断をすることができ、この7種類のマーカーの発現量は、高リスク神経芽腫患者における腫瘍量を反映して、病期および検体採取時期に応じて変動することが明らかになり、治療後においては、再発した場合、この7種類のマーカーの発現量は有意に高い値を示した。
このように、デジタルPCRで定量した7種類のマーカーの発現量は、リアルタイムPCRよりも正確に再発・再増大を予測することができた。
以上の結果から、7種類のマーカーをデジタルPCRで定量する本モニタリング法は、高リスク神経芽腫患者の治療後に残存する病変の変動を把握し、再発・再増大を予測するのに有用であると考えられる。
この研究成果は、学術雑誌「Journal of Molecular Diagnostics」に掲載された。