骨肉腫は主に若年者の骨に発生する癌で肺に転移しやすく、肺に転移した場合の治療法は限られているおり、腫瘍免疫療法が実施されることが多いが、骨肉腫に対する有効性は未だ確認されておらず、更なる研究が必要とされている。
TLR4(Toll-like receptor 4)は病原体に特徴的な分子を認識するToll様受容体の1つで、グラム陰性菌の外膜の成分であるリポ多糖やグラム陽性菌のペプチドグリカン層にあるリポテイコをリガンドとして認識する受容体であり、体に細菌が侵入した際などに免疫を活性化して細菌を排除する自然免疫と呼ばれる重要なメカニズムの鍵となる分子の一つである。
今回、このTLR4を刺激、自然免疫を活性化することでCD8⁺T細胞が骨肉腫の進行を抑制することが報告された。
TLR4を刺激するLPS(リポ多糖)をマウスに投与したところ、正常マウスではTLR4刺激により、腫瘍に対するCD8⁺T細胞の活発な活動が認められ、またマウスからCD8⁺T細胞を除去すると、TLR4刺激による骨肉腫の進行抑制効果が消失した。
また、正常なマウスではTLR4刺激に伴い骨肉腫の増殖と肺転移が抑制され、結果的に生存期間が延長されたが、TLR4の働きが遺伝的に欠失しているマウスでは効果は認められなかった。
この結果により、TLR4の刺激、即ち自然免疫活性化による骨肉腫の進行抑制には、CD8⁺T細胞が重要な役割を果たしていることが明らかになり、さらに実際にヒトの骨肉腫においても、CD8⁺T細胞の活動が活発な場合は生存期間がより長いことが確認された。
骨肉腫における新規治療法の開発に繋がることが期待される。
本研究は「Cancer Immunology, Immunotherapy誌」でオンライン公開された。