細胞の遊走を制御する分泌タンパク質(ケモカイン)の一種であるCCL5は、炎症部位における免疫反応を制御・調整しており、近年、CCL5が癌細胞に対する細胞障害性リンパ球などの免疫反応にも関与することが報告されている。
しかし、CCL5の発現が癌の増殖進展の抑制において調節機能を発揮するかについては全く不明である。
今回、RUNX転写因子が、CCL5遺伝子の発現を正に制御する二つのエンハンサーを同定し、また、ゲノム編集技術により、この二つのエンハンサーを欠損するマウスを作製して解析した結果、エンハンサー欠損マウスでは、CCL5の発現量の低下により、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の機能が亢進し、癌細胞増殖が抑制されることを発見した。
これらの結果は、CCL5が免疫細胞の機能状態を制御することで、癌免疫応答を調整するという新たな知見を示唆する。
本研究は、オンライン科学雑誌『Nature Communications』に掲載された。