生体外でマウス体細胞を培養し、癌関連遺伝子を導入後、マウスへ移植することにより、白血病や骨肉腫をはじめとする様々な発癌マウスモデルを開発されていたが、樹立が困難であった高分化型B細胞由来のリンパ腫の新たなマウスモデルの開発に成功し、今回、悪性リンパ腫が癌免疫に対する抵抗性を獲得する仕組みが明らかにされた。

アポトーシスによる細胞死を誘導する細胞膜分子Fasの発現低下が、リンパ腫の発症と維持にきわめて重要であることがわかり、また、B細胞の分化に関わる分子CD40をリンパ腫細胞で活性化すると、Fasの発現が回復することが見出された。

一方、ヒトリンパ腫の一部の細胞株ではアポトーシス阻害分子Livinが高発現しており、Fasを再活性化してもアポトーシスに抵抗性を示すことがわかり、さらに遺伝子発現プロファイル解析により、悪性リンパ腫のバーキットリンパ腫、および、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫において、Fas低発現とLivinの高発現が予後不良と強い相関性を示すことが明らかになり、Livinを標的とした阻害剤をLivin高発現リンパ腫細胞に投与し、Fas誘導アポトーシスが有意に増加することも確認された。

これらより、Livinを標的とした治療法は、Fas誘導アポトーシスによる癌免疫の効果を高め、またFasリガンドを介したFas誘導アポトーシスは、細胞傷害性T細胞による免疫治療において、リンパ腫だけでなく他の癌種に対する癌免疫抵抗性の仕組みの解明につながると期待される。