卵巣がんは、女性特有の癌腫のなかでも最も予後不良ながんである。
卵巣は腹腔内に浮遊し、早期に腹膜播種などの転移をきたすことが予後不良因子となっている。
このがん転移のメカニズムを解明することで、卵巣がんだけでなくさまざまな癌腫に対する新たな治療薬の開発に大きく貢献できることが期待される。
今回、摂南大学薬学部と東北大学大学院医学系研究科、金沢医科大学総合医学研究所生命科学研究領域の国際共同研究グループにより、セラミド合成を担うセラミド合成酵素 2(CerS2)の発現量が転移性がん細胞において低下していること、また CerS2 の発現を抑えることで卵巣がん細胞の運動能と転移能が促進することが報告された。
セラミドには炭素側鎖長の異なる複数の分子種が存在しており、そのうち CerS2 によって産生された極長鎖 C24:1-セラミドが、卵巣がん細胞の運動性を抑える分子種であることが判明した。
C24:1-セラミドは小胞体(細胞内小器官)で CerS2 の触媒作用により生成された後、細胞形質膜に移行し、セラミド分解酵素セラミダーゼによって代謝分解される。
このセラミダーゼの活性を抑制すると、C24:1-セラミド量が上昇するとともに細胞運動性の指標である葉状仮足の形成が抑えられる現象が捉えられた。捉えました。
以上より、がん転移を抑えるメカニズムに CerS2 とその代謝物である C24:1-セラミドが関与し、CerS2 が抗転移性作用を示すことが明らかにされた。
今後は、CerS2 が卵巣がんの新たなバイオマーカー・創薬標的となる可能性があると考えられる。