乳癌は、女性が罹患する癌の中で最多であり、またその乳癌の中でトリプルネガティブ乳癌は最も難治性である。

乳癌にはエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2 受容体 (ヒト上皮増殖因子受容体2) のどれかが陽性の内腔細胞乳癌と、これら3つの受容体を全くもたないトリプルネガティブ乳癌 があり、トリプルネガティブ乳癌は全乳癌の約20%を占める。

これら3つの受容体があると、ホルモン療法や抗体療法などの分子標的療法で癌を抑制できるが、トリプルネガティブ乳癌はこれらの受容体をもたないため、有効な分子標的療法がなく、また浸潤・転移もしやすいことから、乳癌の中でも最も予後が不良である。

トリプルネガティブ乳癌は、他の乳癌に比べて抗癌剤治療にも抵抗性で、予後が不良となる場合が多いことから、その鍵となる原因分子の早急な解明や新しい治療薬の開発が期待されている。

今回、神戸大学大学院医学研究科分子細胞生物学分野らの研究グループは、細胞内シグナルであるHippo-TAZ経路がトリプルネガティブ乳癌の発症・進展の鍵となるドライバー経路であることを明らかにした。

この発見は難治性乳癌の新しい治療薬の開発につながる可能性がある。

本研究成果は、米国科学アカデミー紀要誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載された。