がん遺伝子パネル検査は一度に多数の遺伝子異常を検出することが可能な検査法で、固形がんを対象とした検査が既に保険適用されているが、血液がんでは国内外ともに保険適用された検査はない。
固形がんと血液がんでは、認められる遺伝子異常の種類が大きく異なることや、血液がんのがん細胞は末梢血、骨髄、リンパ節など様々な組織に含まれるため検査に用いる試料が様々であること、また検査の目的が固形がんでは「治療法選択」が主であるのに対し、血液がんでは特徴的な遺伝子異常の有無により診断が変わり、予後が変わることで治療方針が変わるため「治療法選択」だけではなく「診断」と「予後予測」も目的として検査を行う必要があること、などの理由で、固形がんとは異なる独自の開発が求められていた。
今回、国立研究開発法人国立がん研究センターと大塚製薬株式会社などと2020年に共同開発した血液がん(造血器腫瘍)に対する遺伝子パネル検査において、診断や治療法選択、予後予測に有用な遺伝子異常を検出するパネルを設計し、性能評価と実臨床における有用性を検証するため、国内主要施設と共同で初発・再発の血液がん患者さん176人の検体を用いて前向きコホート研究を実施し、本遺伝子パネル検査の実臨床での有用性が示唆された。
これにより、今後、血液がん診療における包括的ゲノムプロファイリングの普及とゲノム医療を推進するための基盤が構築されることが期待される。
本研究結果は科学誌「Cancer Science」に掲載された。