通常、分泌されるタンパク質はシグナルペプチドと呼ばれるアミノ酸配列を持つ特徴があるが、近年、シグナルペプチドを持たない細胞内タンパク質の分泌現象が報告されている。
肝がん細胞において、本来は細胞内でのみ局在すると考えられてきた核輸送因⼦ importin α1 やリン酸化酵素 PKCδなどの細胞質タンパク質が細胞外に分泌する現象を⾒出された。(核輸送因⼦インポーティンα1の新たな機能の発⾒、肝がん細胞から特異的に異常分泌されるタンパク質「PKCδ(デルタ)」を発⾒)。
なかでも PKCδの細胞外分泌は肝がんでの特異性が⾼いだけでなく、腫瘍増殖に関わることも突き⽌めており、「細胞質タンパク質の分泌」が肝がんにおいて極めて重要な現象であることが明らかとなってきている。
しかし、その分泌機構についてはいまだ解明されていない点が多く存在する。
今回、東京慈恵会医科⼤学・⽣化学講座と同内科学講座・消化器・肝臓内科との共同研究により、肝がん細胞において⼀部の細胞質タンパク質が細胞内⼩器官である⼩胞体を起点として細胞外に放出される新規分泌機構が発見された。
これにより、肝がんの病態機構の理解につながることから今後、診断や治療法への応⽤が期待される。
本研究成果は、科学誌『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)』オンライン版に掲載された。