帝京大学先端総合研究機構と国立がん研究センター研究所らは、以前、大腸がん手術検体よりオルガノイド形成等によるがん三次元培養細胞系を樹立し、その中に存在する大腸がん幹細胞を対象とした研究を行ってきた。
その結果、NOX1オキシダーゼによる活性酸素種の生産に起因するmTORC1キナーゼの活性化が大腸がん幹細胞の増殖に重要であることを報告した。
また、オルガノイドやマウス移植腫瘍を用いた解析により、大腸がん組織には増殖型のがん幹細胞と休止型(増殖の極めて遅い状態)のがん幹細胞が混在することがわかり、さらに、休止型がん幹細胞が抗がん剤に強い抵抗性を示すこと、転写因子であるPROX1が休止型がん幹細胞の抗がん剤抵抗性に重要であることを報告した。
今回、新たに、大腸がんの抗がん剤抵抗性の維持に働く新しい分子メカニズムを発見した。
大腸がん患者由来オルガノイドやマウス移植腫瘍を用いて、オートファジーの活性化がPROX1陽性の抗がん剤抵抗性細胞を誘導することを発見した。
また、PROX1はmTORC1を介したフィードバック制御により、抗がん剤抵抗性細胞の特性維持に働くという新しい分子機構を明らかにし、さらに、既存の抗がん剤とオートファジー阻害剤を併用することにより、大腸がんを相乗的に阻害することを見出した。
これにより、今後はオートファジー経路を標的とした新規阻害剤の開発、および大腸がんに対する新しい治療法の発展が期待される。
本研究成果は、米国科学誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載された。