ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、がん細胞のみを選択的に殺傷する治療法として近年注目を集めている。

しかしながら、悪性度の高いグリオーマ細胞に高い集積性を示すホウ素薬剤の開発が急務となっている。

今回、東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所と大阪医科薬科大学 医学部 脳神経外科学と筑波大学 陽子線治療センターおよび京都大学 複合原子力科学研究所らの共同研究グループは、悪性脳腫瘍に高い治療効果を有する中性子捕捉療法用新規ホウ素薬剤PBC-IPの開発に成功した。

グリオーマ細胞に高発現している葉酸受容体αのリガンド、アルブミンリガンド、ホウ素クラスターが連結されたホウ素薬剤「PBC-IP」を新たに開発した。

PBC-IPは、臨床用ホウ素薬剤の10~20倍のホウ素送達能を持つとともに、顕著な腫瘍増殖抑制効果が得られた。

また、convection-enhanced delivery(CED)法によってPBC-IPをマウス脳内患部に局所投与し、中性子照射実験を行ったところ、既存法と比べてマウスの生存期間が増加することがわかった。

さらに、通常のホウ素薬剤投与量の1/50の投与量で高い治療効果が得られることから、今後、難治性悪性脳腫瘍の治療法の開発が期待できる。

本研究成果は、国際学術雑誌「Journal of Controlled Release」に掲載された。