内膜肉腫は、大血管や心臓から発生する極めて稀な悪性腫瘍であり、心臓原発悪性腫瘍の中で最も多い組織タイプの一つです。内膜肉腫は、希少がんの中でもさらに患者数が少ない超希少がんであり、予後は悪く、全生存期間の中央値は8-13カ月と報告されている。
内膜肉腫は、大血管や心臓に発生する腫瘍であることから、診断時に完全切除や適切な切除断端の確保が困難である。
局所治療(手術や放射線治療)を容易にし、症状をコントロールするには、迅速な腫瘍縮小が重要であると考えられる。
しかしながら、現在使用されている化学療法(アントラサイクリン系薬剤を含む)では、迅速な腫瘍縮小の期待は難しく、革新的な新しい治療法が必要である。
また、内膜肉腫は、MDM2の過剰発現と染色体12q12-15領域(CDK4とMDM2を含む)の増幅によって特徴づけられる腫瘍であり、MDM2阻害剤が本疾患の治療戦略になる可能性がある。
今回、国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院は、がん化やがん細胞の増殖に関連するMDM2の増幅を有する内膜肉腫に対してMDM2阻害剤(ミラデメタン)の有効性を評価する第1b/2相医師主導治験を実施した。その結果、20%で、腫瘍の30%以上の縮小(奏効)が認められ、標準治療のない内膜肉腫に対してMDM2阻害剤が有効である可能性を初めて示した。
また同時に、国立がん研究センター研究所において、投与前後の腫瘍組織および血液検体の経時的な遺伝子解析を行い、MDM2阻害剤の有効性と耐性に関連する遺伝子異常を初めて同定した。
今後、MDM2阻害剤の治療効果を予測するバイオマーカーとしての活用が期待される。
本研究の成果は、米国癌学会旗艦誌「Cancer Discovery」に掲載された。