自律神経は、主に活動期に活発になる交感神経系と安静時に活発に働く副交感神経系からなり、この2系の神経バランスが心身の維持に大切とされる。
ストレスに関連する自律神経の変化が癌に影響する可能性は示唆されていたが、癌組織に交換神経がどのように作用し影響するかは明らかではなかった。今回、自律神経の1つである交感神経の緊張によるストレスが、乳癌組織内に入り込んで癌の進行や治療後の経過に深く関与し、さらに癌組織内の交感神経の密度が高い人は再発しやすいことが明らかになり、英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」電子版に掲載された。
乳癌の罹患率は40代後半から50歳代前半がピークで10年生存率は約84%であり、早期に発見すると予後良好な癌である。そのなかで、トリプルネガティブ乳癌のような抗癌剤やホルモン療法に反応しにくい治療抵抗性癌に対し、癌組織に分布する自律神経を遺伝子治療などで操作する神経医療が、新たな癌治療戦略になる可能性があると考えられる。ストレスが癌に悪影響を与えることを初めて医学的に明らかにした研究成果で、自律神経を操作する方法による新しい治療法の開発につながると期待される。