多くのmicroRNAの中で、microRNA-34aは癌抑制に働く遺伝子として最も重要microRNA(miRNA)のひとつである。今回、miRNA34の標的遺伝子を同定する方法が開発され、新たな標的遺伝子として乳癌の増悪化に関わるGFRA3が同定され、国際科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences USA」(米国科学アカデミー紀要)に掲載された。

miRNAの機能を明らかにする上で、その標的遺伝子を同定することは最も重要であり、トランスクリプトーム解析とTargetScanがある。

トランスクリプトーム解析は、マイクロアレイやRNA-sequenceなどのmRNAの発現変化を網羅的に解析する方法である。

TargetScan は、miRNAの配列情報からターゲットを予測する方法である。

これらの予測ツールを用いた解析を組み合わせてスクリーニングする方法が一般的であるが、トランスクリプトーム解析では、翻訳抑制される標的遺伝子を同定するには十分ではない。

また、TargetScanは、ターゲットとなるmRNAの3’UTRのみの情報で予測する場合が多く、コーディング領域や5’UTRを介したmiRNAの制御について、標的遺伝子を同定することが不可能である。

今回の研究では、5’UTR、コーディング領域、3’UTRを含む全長遺伝子配列をレポーターとして用いて、タンパク質レベルでの発現変化を測定できるルシフェラーゼアッセイをベースにした、短期間で効率的にmiRNAの標的遺伝子を同定するレポーターライブラリーシステムと呼ばれる手法を用いて、癌抑制機能をもつmiR-34aについて、標的遺伝子の探索を行った。

その結果、既に報告されている標的遺伝子に加え、新規な標的遺伝子としてGFRA3、FAM76A、REM2およびCARKLを同定し、またmiRNAは主に標的遺伝子の3’UTRを介して制御するとされているが、GFRA3はタンパク質をコードしているコーディング領域(CDS)を介して直接制御されていることが明らかになった。

このGFRA3を、MDA-MB-231という乳癌細胞においてノックダウンすると、MDA-MB-231細胞の増殖が抑制され、また、GFRA3の発現が高い乳癌患者では、GFRA3の発現が低い乳癌患者に比べて生存率が低いことがわかった。これらの結果から、GFRA3は乳癌増悪化に関与する重要な遺伝子であることが明らかになった。

今後、GFRA3などの標的遺伝子を用いた乳癌に対する遺伝子治療の開発が期待される。